自宅という魔法の力

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看護師付き添い外出・旅行事例3


Iさんは脳梗塞で麻痺があり、今、病院でリハビリをしています。

高齢のため、リハビリは疲れます。

リハビリ以外はほとんど横になっています。

 
唯一のご家族であるご主人が面会に来ても、会話は弾みません。

Iさんには軽い失語症があります。

思うように言いたいことが言えないのです。

言葉を発しても、それを聞いているご主人には難聴があります。

他の患者さまのいる病室では思うように会話が成立しません。

 
ご主人は一方的に「頑張れよ。早くよくなって退院しよう」と言います。

Iさんだって早く退院したいのです。

 
しかし、「歩けなければ困るでしょ。ご主人のために家事ができなければ困るでしょ。

だから、今日は○○をしましょう。」と

毎日、理学療法士や作業療法士に言われ続けています。
 

本人なりに頑張っているつもりなのになかなか成果は現れません。
 

一人でトイレに行こうとしても「転倒すると危ないから。」と、

一人ではトイレにも行かせてもらえません。

ナースコールを押し、「トイレに行きたい」と言うと、

看護師は忙しいのか車椅子でトイレに連れて行ってくれます。

『リハビリのために、家に帰るために、歩いてトイレに行きたい』と思うのですが、

それを声に出して言えません。
 

食事はどんぶり一杯のお粥です。

どんぶり一杯のお粥は食べられません。

麻痺があるため、重くてどんぶりは持てません。

「ちゃんと、どんぶりを持ってこぼさないように食べてください。たくさん食べないと帰れませんよ。」


『頑張っても本当に家に帰れるのか?』と不安になります。

日に日に元気がなくなります。

 
Iさんは日に日に活気がなくなり、物忘れがひどくなっていきます。

それを見ているているご主人は『病院にいる間にボケてしまうのではないか』と思っています。

 
退院は1ヵ月後です。

介護保険の申請は終わっていますが、家に帰るには住宅改修が必要です。

『廊下に手摺りを、トイレにも手摺りを、お風呂の段差は?手摺りは?

玄関にも大きな段差があるのでそれも改修しなければ・・・』
 

住宅改修は業者さんにお願いするとしても、住宅改修が終わる前に

『妻はボケてしまう!!』


『住宅改修が始まったら、家の中が落ち着かない。

1ヶ月なんて待ってられない。

ボケないうちに家に一度つれて帰りたい』

 
そんなご主人の思いが叶い、試験外泊の許可がでました。
 

病院に伺い、「外泊できるのですよ。今日、ご自宅に帰りましょうね。」と

声をかけても頷きはするものの、外泊の意味が理解できないようです。
 

介護タクシーに乗り、ご自宅の前に。

タクシーから車椅子に移り、玄関へ。
 

玄関には二段の段差があります。

手摺りもない玄関です。
 

『「抱えて段差を上らなければ…』と思った時です。

Iさんは両手を差し出し、「引っ張って」と言います。
 

手を差し出し、引っ張りあげるとIさんは30センチほどある段差を二段上り、

玄関から家の中に入りました。

 
そんなことができるなんて。

誰もがビックリです。
 

家の中に入ったら、車椅子は使えません。

手摺りもありません。


しかし、Iさんの足取りはしっかりしていました。
 

手摺りがなくても手を添えるとトイレまで歩きます。

ベッドの準備も間に合わなかったので布団ですが 、

布団からも手を添えると起き上がれます。
 

軽いお茶碗は、自分で持つことができます。

お刺身が大好きなIさんは3ヶ月ぶりにお刺身の食事です。

たくさんたくさん召し上がりました。
 

自宅に帰るだけで元気が出ました。

会話も弾みます。
 

やはり、自宅には元気になる魔法の力がありました。

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